《前編》青山から上海へ。「大切な人に、こんな素材の服を着て欲しい」峯村 昇吾 mar.(マール)テキスタイル

起業という選択。20歳~30歳前半で突き抜けたい人へ。「いま、伝えたい想い」

 

「mar.(マール)」テキスタイル 峯村 昇吾 様

1982年東京都生まれ。青山学院大学経済学部卒。
在学中は体育会サッカー部に所属し、サッカー漬けの毎日を送る。大学卒業後、どうせやるなら好きな事で自分自身を磨きたいと、服を扱う繊維専門商社に入社。そこでテキスタイルの企画開発に携わり、素材の世界の奥深さを知る。「大切な人に、こんな素材の服を着て欲しい」。そんな想いを抱き自身のブランド「mar.(マール)」を2016年春夏に立ち上げる。アパレル業界における流通をイノベーションし、日本産の優れた素材を世に出すべく動いている。大量生産のパラダイムから抜け出し、ストーリーを持った素材によって流行りや気分によって左右されない本物の定番品を生み出していく。
また、日本のものづくりのものがたりを伝える「セコリ百景」というメディアで、アパレルのいまを伝えるコラムも連載。

 

◆歯の矯正をされてるんですね?

そうなんです。もう1年経ったくらいですね。しかも顎変形症という病気に認定されているので、手術も必要なんですよ。手術が怖くないと言ったら嘘になりますが、

これも自分の人生は自分で手に入れる為に起こした行動の一つです。何かを始めるのに遅いとか関係ないですよね。

僕は歯の矯正を通じて、自分のライフスタイルを体現しています(真剣な眼差し)。矯正の話になると朝までいけちゃうので、この辺にしときます(笑)。

◆歯の矯正話も終わったことなので、次に簡単にサッカーキャリアの話から聞かせてください。

はい。学生時代は、当時関東1部リーグに位置していた青山学院大学の体育会サッカー部に所属していました。大学一年の時は、とにかく早く四年になりたかったくらい、当時の僕にはキツかったです。君サッカー経験者?って言われましたからね(笑)。周りの経歴は、高校選抜、国体、クラブチームユース、もしくは全国大会出場出身者ばかり。僕は無名高校で地区の選抜経験すらもなかったので。プロを目指しているチームメイトとは目標が違って、僕にはこの環境でどこまで上手くなれるか、という自分への挑戦でした。なんとか試合に出る為に、自分の強みと弱みを客観的に把握して、日々の練習から挑戦と振り返りを繰り返す毎日。チーム全体を見て、ここなら自分の強みを活かせるしそんな競争力も無いな、ということでポジションを変更したり、今思えば、がっつりSWOT分析からマトリックス分析をした上でPDCAを回していましたね(笑)
結果として4年間ずっとサテライトのままでしたが、当時の部長から「本当に伸びたな、1年生は見習うように」と部員の前で言ってくれたのが本当に嬉しくて、今でも鮮明に覚えています。僕の中で大学サッカー部でのプレイヤーとしての成功はこの一言くらい。普通は成功とは言えないくらい小さな事かもしれませんが、僕にはこれが成功なんです。

最小は最大と繋がっていて、最小単位のかっこよさや、最小単位の成功こそが、最大級の目標達成に繋がっていくのだと、僕は思っています。

◆なぜアパレルの業界へ?

学生時代はサッカーしかしてこなかったので、

好きなことなら夢中になれる、って逆に分かりやすかったんですよね。

だからサッカーの次に服に興味があったので、服を扱う繊維の専門商社に決めました。若手と言われる時代はとにかく仕事ができなくて、客先からも仕入先からもボロカスに言われてました。ほぼ毎日怒られてましたからね。

◆独立までの経緯を教えてください。

きっかけは3年間の上海駐在です。海外駐在というものを通して僕が得られたものは、異なる文化圏で生活する事の難しさを知ったことや、グルーバルで働くことの面白さを知ったこと、ではなくて、

日本人の素晴らしさを再認識出来たこと、

でした。

岡田JAPANがベスト16に進んだサッカーワールドカップの南アフリカ大会や、東日本大震災があった期間とも重なり、改めて日本の凄さを痛感しました。日本繊維産業の産地メーカーのモノづくりの技術力は世界的にみても秀でているのですが、年々衰退していっているのが現状です。もったいない、と本当に思いました。そもそも新入社員の時からめちゃくちゃ産地の仕入先メーカーの方々にはお世話になっていて、

もっとこの人たちと一緒に仕事がしたい、とシンプルに思うようになりました

現状のアパレル業界では、流通でBtoBが必要以上に介入してしまっているんですよね。そのせいでコスト高になり、日本の本当に優れた素材は世に出ません。この流通をイノベーションすることで、日本産の秀でた素材の商品をもっと世に出していきたいと考えました。

逆に言うと、本当に自分が好きな素材を商品化するには、構造改革を起こして自分でやるしかなかったんです。

あと、何をするかよりも誰とするか、これも大きかったですね。あまり好きではない客先や社内の人と一緒に仕事がしたくなかった。自分が好きな人と一緒に仕事がしたい、っていう単純なわがままです(笑)。でも、旅行ってどこに行くかよりも誰と行くかって、凄まじく大事ですよね。結婚相手って本当に好きじゃないと結婚しなくないですか?

仕事も一緒で、人生で大部分を占めるのに、自分が好きな人軸で選ばないのって、そもそも違うと思います。シンプルに。

 

 

◆好きなことで人軸。

 

好きなこと、好きな人と一緒にビジネスをする。信頼を大切にしている峯村さんです。人生の9割は「人間関係」だと思っていて、ビジネスもほぼ人間関係です。少しのことで相手に信用がなくなる、相手に信用を置けなくなる、こうしたことから人間関係に歪みができます。上海、日本と海外経験があることも強みですね。繊維アパレルと言えば、中国です。