フリーアドレスのメリットとデメリットは?上手く採用している国内外の企業事例
来期からうちの会社もフリーアドレスを導入するらしい、と知人から聞いた時に「うらやましい」と思いますか?
近年、フリーアドレスというオフィス体制が注目されていますが、これはただの流行なのか、それとも確たる効果が発揮されるものなのでしょうか。今回は、気になるフリーアドレスのメリットやデメリット、また上手く取り入れている国内外の企業も合わせてご紹介します。
そもそもフリーアドレスとは?
フリーアドレスとは、通常は社員が持つ「自分の席」を指定しないオフィスのことです。つまり、社員はその日の仕事をオフィス内のどの場所で行うのか、自分の好きに決めることが出来ます。
フリーアドレスが注目されている背景には、テレワークや在宅勤務など働き方の多様化があります。IT技術の発展により働く場所が自由となって、固定席の必要性は薄れつつあるのも1つの要因でしょう。
フリーアドレスのメリット
オフィスのフリーアドレス化を耳にするようになったのは、以下のようなメリットが普及を後押ししているからでしょう。
フリーアドレスのメリット①オフィススペースの縮小
最近はフレックス制の導入や業務のアウトソーシング化などもあり、「社員数>出社する社員」となる会社が増加しています。すると社員数のデスクや座席を置くことは、スペースの無駄遣いにもなり得るんですよね。実際に必要な数に抑えることで、オフィスをコンパクトにでき、家賃や電気代も削減することができるのです。
フリーアドレスのメリット②コミュニケーションの強化
フリーアドレスを採用すると、固定席のみならず「部署」という区分けからも解放されます。これにより様々な考え方に触れることができ、従来にはない新しいアイデアが浮かぶキッカケとなるかもしれません。
フリーアドレスのメリット③勤労意欲の高まり
毎日同じ席で仕事をしている人は、気持ちの緩みを感じたことがあるのではないでしょうか。決まった席が無いことで、新鮮な気持ちで仕事に向き合う効果があるのです。フリーアドレスが良い刺激になり、生産性の向上が期待できます。
勤労意欲に繋がる内容ですが、意外なメリットとして「デスク周りの整理整頓」などの声も挙がっています。固定席でないため、常にデスクを綺麗にしようと心がける、また持ち物や書類などの整理にも積極的になるためオフィス環境が自然と整うのです。
フリーアドレスのデメリット
フリーアドレスの導入事例が目立つようになり、その内容もどんどん整備されてはいるものの、以下のようなデメリットも存在します。
フリーアドレスのデメリット①所在が不明確
自分のデスクがないということは、もちろん座席表もありませんので、用事のある相手を探さねばなりません。
フリーアドレスのデメリット②仕事の効率低下の恐れ
オフィスで働く人の中には、固定席で集中することで仕事の効率を上げるタイプもいます。
また、周りの雑音を邪魔に感じる人もいるでしょう。
そうした人にとっては、フリーアドレスであることが仕事の効率を低下させる要因となってしまうのです。
国内外におけるフリーアドレスとの関わり
最近になって知名度を上げたフリーアドレスですが、実は80年代後半に日本で始まった制度なのです。
欧米と比べて狭いオフィスの多い日本が、スペースを確保するために開始されたのです。(参考:筑波大学)http://www.tsukuba.ac.jp/notes/052/index.html
これが斬新な働き方であると欧米に取り入れられ、現在アメリカでは約70%もの企業が「フリーアドレス」を含むオープンな働き方を採用しています。(参照元 BBC Capital)
こうした席に縛られない働き方は、脳に刺激を与えてクリエイティブな発想に効果的とされています。
その一方、イギリスBBCの記事では、フリーアドレス制によって約15%も生産性が下がるとの発表もあります。これは、周囲の雑音が集中力を低下させたり、幅広いコミュニケーションが長い雑談を生むことが原因といわれています。
また、日本では「自由に席を選んで良い」とされても、上司が先に席を選ぶことを待つ傾向があり、実質的にフリーアドレス制が採用されないこともあります。実際、マイナビニュースが日本の社会人に行った調査では、約79.4%がフリーアドレス制に反対との結果が出ています。
では、フリーアドレスを効果的に取り入れている企業はどのような工夫をしているのでしょうか?
フリーアドレスを採用している企業
デメリットでご紹介した「仕事の効率が低下」することを防ぐには、フリーアドレスの自由なオフィスの中に「集中できる環境」を設ける必要があります。
【フリーアドレス事例①】ダイヤモンドオフィスサービス株式会社(日本)の例
三菱重工グループのダイヤモンドオフィスサービス株式会社では、オープンスペースや半個室のスペースなど、働く場所を4つに分けています。
こうしたスペースの分割によって、フリーアドレス制のもとでも個人作業を集中して行えるよう配慮がなされているのです。
【フリーアドレス事例②】NBBJ(アメリカ)の例
BBCによると、アメリカの建築デザインを行うグローバル企業NBBJでは、社員が共有する一部のスペースにセンサーを配置しているのです。
このセンサーは約30メートル毎に置かれ、人口や騒音、温度を測っています。
社員はこのデータをアプリによって確認し、オフィス内で自分に合った環境を選ぶことができるのです。
まとめ
コミュニケーションが広がり、新鮮な刺激をもたらすフリーアドレスですが、デメリットもあることが分かりましたね。
社外での仕事が多い「営業職」では、職場がコンパクトになって良いですが、社内で集中して仕事をする「事務職」はフリーアドレスに不向きといえます。
メリットとデメリットをよく理解して、業種に応じて慎重に採用することが大切なのです。